私たちは、困ったことや悩みがあるとき、「どうしてうまくいかないんだろう」「自分はダメだ」と考えてしまうことがあります。もちろん、問題の原因を考えることも大切ですが、実はそれだけでは前に進めないこともあります。そんなときに役立つのが「解決志向アプローチ(かいけつしこうアプローチ)」という考え方です。これはカウンセリングやコーチングでもよく使われている方法で、「うまくいっていること」や「できている部分」に注目しながら、よりよい方向を見つけていく考え方です。

「できていること」に注目
解決志向アプローチでは、「問題」よりも「解決」(できていること)に目を向けます。たとえば、「授業中に集中できない」という悩みがあるとします。多くの場合、「なぜ集中できないのか」を考えがちですが、解決志向では「いつなら少し集中できていたか」「そのとき何をしていたか」をたずねます。そうすると、「昨日の理科の授業では、最初の10分は集中できていた」「ノートを自分の言葉で書いていたからかもしれない」といった小さな“できていること”が見つかります。その小さな成功の中に、次のステップのヒントが隠れているのです。
望む未来をイメージ
もうひとつ大切なのが、「望む未来をイメージすること」です。「どんな自分になりたい?」「問題が少しよくなったとしたら、どんな毎日になっていると思う?」と考えることで、目標がはっきりしてきます。たとえば、「朝、学校に行くのが少し楽になる」「友だちと安心して話せるようになる」といった“少し先の未来”を思い描くことで、自然と気持ちも前向きになっていきます。
小さな一歩を大切に
解決志向アプローチのもうひとつの特徴は、「小さな一歩を大切にする」ことです。いきなり100点を目指すのではなく、「昨日より1点よくなったら、それはどんなこと?」と考えます。このように小さな進歩を見つけていくことで、達成感や自信が少しずつ積み重なっていきます。カウンセラーや先生との面談でも、「今日は少しだけ前向きになれたね」「先週より笑顔が増えたね」といったやりとりを大切にします。
人は、できていないことばかりに目を向けると、気持ちが落ち込みやすくなります。でも、できていることや努力していることを見つけると、気持ちが軽くなり、やる気も出てきます。解決志向アプローチは、まさにその力を引き出す考え方です。
ワーク:「うまくいっているときを見つけよう」
- 最近、少しでも「うまくいった」と思えることを書いてみよう。
例:授業中に少し集中できた/友だちに自分から話しかけられた。 - そのとき、どんなことをしていた? どんな気持ちだった?
- その“うまくいったとき”が、明日も続いているとしたら、さらにどんなことがうまくいきそう?
解決志向アプローチは、「問題をなくす」よりも、「少しずつよくなる」ことを大切にしています。どんな小さな一歩も、あなたが前に進んでいる証拠です。できていることに気づくと、今までずっと小さな一歩がたくさん続いてきたことが分かります。もちろん、これからも小さな一歩は続きます。そして、いつの間にか大きな進歩になっているのです。
