スクールカウンセラー便りの具体例15 柔軟に考えよう

柔軟に考えよう 前編

人は誰でも、知らず知らずのうちに色々なことを考えています。色々な場面でスムーズに行動するために、はっきりと気づかないうちに色々と考えて判断して行動しているのです。例えば、登校の途中で信号が赤になったら何を考えていると思いますか? よく考えなくても、「信号が赤だから止まらなければならない」と知らず知らずのうちに考えています。そして、自然に青になるまで待つようにすると思います。こんなふうに良くある場面ではスムーズに行動できるように、自動的に考えて判断しているのです。ある状況で自動的に出てくる考えという意味で、こういった考えは自動思考と呼ばれています。

自分を苦しめる自動思考があります

上に書いたように、自動思考は、良くある場面でスムーズに行動するためには役に立ちます。一方では、不安だったり、悲しかったり、腹が立っていたりするようなマイナスの感情が生じているときには、自動思考がかえって自分を苦しめてしまうことがあります。

例えば、次の日にテストがあるので勉強している場面を想像してみてください。実は、勉強がはかどっていなかったため、明日のテストがきちんとできるかどうか、すごく不安になっています。そういう場面で、どんな考え(思考)が浮かんでくるでしょうか?

例えば、「100点を取れないから、勉強する意味がない」という考えが湧いてくるかもしれません。他にも、「勉強してない内容が出題されるに決まっている」という考えが湧いてくるかもしれません。

もし、「100点を取れないから、勉強する意味がない」という考えが湧いてきたら、気持ちがすごく落ち込んでしまいそうです。

もし、「勉強してない内容が出題されるに決まっている」という考えが湧いてきたら、余計に不安になったり、辛くなったりするかもしれません。

こんなふうに、自分でそういうふうに考えようと思って考えているわけではないのに、自分を苦しめる自動思考が自然に湧いてくることがあります。

自動思考を発見する

どんな人にも自分を苦しめる自動思考が湧いてくる可能性がありますが、自動思考にはパターンがあることが分かっています。自分がどんな自動思考で苦しめられているのか分かっていると、対処しやすくなります。良くある自動思考を3つだけ紹介します。

・結論への飛躍(ひやく)
 何かが起きたら、絶対にこうなると決めつけてしまう自動思考です。

・最悪思考
 最悪なことが起こっているとか、これから最悪なことが起きると決めつけてしまう自動思考です。

・白黒思考
 状況を白か黒かどちらか一方に決めつけてしまい、その中間の状況になる可能性をゼロだと考えてしまう自動思考です。

どうでしょうか? 上で紹介した「100点を取れないから、勉強する意味がない」という考えは、『白黒思考』に当てはまります。「勉強してない内容が出題されるに決まっている」という考えは、『結論への飛躍』に当てはまります。

自動思考のパターンが分かっていたら、「自動思考がでてきているなぁ」と気づきやすいと思います。気づいたら、ちがう考え方を試してみることができます。

柔軟に考えよう 前編のまとめ

今回のスクールカウンセラー便りは、「柔軟に考えよう 前編」として、自動思考について解説しました。まずは自動思考に気づくことが第一歩です。自動思考に気づいたら、その自動思考が正しいかどうかを考えることは、後編で解説します。

スクールカウンセラー 〇〇〇〇

柔軟に考えよう 後編

前回のスクールカウンセラー便りでは、「柔軟に考えよう 前編」として自分を苦しめる『自動思考』について解説しました。自分を苦しめる自動思考はパターンが分かっているので、それを知っていると自動思考に気づきやすいということを紹介しました。

今回は、自動思考が正しいかどうか考えることと、柔軟に考えることを解説します。

自動思考が正しいかどうか考えよう

自動思考に気づいたら、その考えが正しいかどうか考えてみましょう。また、今までの自分の経験ではその通りだったでしょうか? その自動思考が正しいという証拠はあるでしょうか? こんなことを考えてみると良いと思います。

「100点を取れないから、勉強する意味がない」という考えは、本当に正しいでしょうか? 今までの経験で、100点でなくてもほめられたことがあると思います。また、100点でなくても、去年勉強したことは今でも覚えています。それは、自動思考が正しくないという証拠です。それから、成績がすごく良い人でもいつでも必ず100点を取っているわけではありません。学校の先生も100点以外の点数を取ったことは絶対にあります。これも自動思考が正しくないという証拠です。だから、「100点を取れないから、勉強する意味がない」ということは正しいとは言えません。

「勉強してない内容が出題されるに決まっている」という考えは、本当に正しいでしょうか? 今までの経験では、勉強した範囲から出題されたとが何度もありました。そもそも、テストは色々な内容が出題されます。こういったことは、自動思考が正しくないという証拠です。だから、勉強した範囲も出題される可能性は十分にありますね。

柔軟に考える

自動思考が正しいわけではないと分かったら、他の考え方をしてみることをお勧めします。柔軟に考えて、自分を励ましてくれる考えや自分に役立つ考えを取り入れてみましょう。

例えば、「100点を取れなくても、勉強したことは少しずつ身についていく」「少しでも勉強すれば、そこから出題される可能性が高くなる」と考えてみることができます。こんなふうに考えることができると、辛い気持ちが和らいできます。やる気も湧いてくるかもしれませんね。

また、友達の〇〇さんならどう言うかということを想像してみることも良いと思います。自分の好きなアイドルやアニメのキャラならどう言うかということを想像してみることもお勧めです。自分ではなかなか考えが広がらなくても、その人物の考え方を真似することで、柔軟に考えるやすくなります。

それでも、自分だけでは柔軟に考えることが難しい場合もあります。その場合は、自動思考が見つかったら、実際に人に話して一緒に考えてもらうのもお勧めです。

また、そもそも自動思考が良く分からないという場合(もちろん柔軟に考えるのが難しいときも!)、スクールカウンセラーに相談してくれることも大歓迎です。

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記事の執筆

半田一郎(公認心理師・臨床心理士)

著作権は、執筆者に所属しますが、スクールカウンセラー便りに利用する場合に限って、自由にご利用いただけます。その際には、発行後で構いませんので、ご連絡をお願いします。スクールカウンセラーのお名前、学校名、発行日をお問い合わせフォームからお知らせください。

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