このサイトは、スクールカウンセラーが【スクールカウンセラー便り】を発行することを、サポートする目的で運営されています。
スクールカウンセラー便りを発行することは、スクールカウンセラー活動が円滑に進んでいくために、大きな意味があります。しかし実際には、勤務時間いっぱいカウンセリングが入っていて、なかなかお便りの作成に時間を充てることが難しい場合が多いように思います。
スクールカウンセラー便りを作成するハードルを下げられるように、情報提供してお便り作成をサポートしたいと思います。多くの子どもたちにスクールカウンセラー便りが届く手助けになればと考えています。
スクールカウンセラーについて知ってもらう
スクールカウンセラー便りの一番の意義は、子どもたちにスクールカウンセラーを知ってもらうことにあると思います。
スクールカウンセラーは、ほとんどの場合、週に1回程度の勤務です。しかも、勤務時間の大半はカウンセリングルームで面接をしています。そのため、ただ単にカウンセリングを繰り返していても、子どもたちがスクールカウンセラーの存在を知ったり、身近に感じたりすることは非常に難しいと言わざるを得ません。
ですが、スクールカウンセラー便りを発行すれば、それが多くの子どもたちの目に触れることになります。内容を読んでもらえないとしても、スクールカウンセラー便りが発行されているということを知ってもらうだけでも大きな意義があると思います。
また、スクールカウンセラー便りは、自然とスクールカウンセラー個人の人となりがにじみ出てくるものだと思います。子どもたちが、スクールカウンセラーの人となりを感じ取ってくれれば、自然と親しみを感じてもらえるのではないでしょうか。
実際、スクールカウンセラー便りの発行を続けていると、子どもたちから「お便り出している人でしょ!」などと声をかけてもらうことがあります。もちろん、スクールカウンセラーはお便りを出す人ではなく、カウンセリングをする人です。子どもたちの理解は若干ズレているのですが、それでも、子どもたちに知ってもらえることは、大きな意味があると思います。
ちなみに、スクールカウンセラーを身近に感じてもらうために、スクールカウンセラーのイラストやキャラクターを作成することも工夫の一つです。スクールカウンセラー便りの中で、キャラクターから呼びかけるようにすると、子どもたちに親しみを感じてもらえる可能性が高くなるように思います。可能ならば、スクールカウンセラーの簡単な似顔絵を使うと効果的です。
カウンセリングの利用へつなげる
スクールカウンセラー便りの発行は、子どもたちが積極的にカウンセリングを利用することにもつながります。例えば、水野(2014)では、相談室便りを読んだ経験は、相談を求めることへの肯定的な態度と相関が得られたという研究が紹介されています。子どもたちにスクールカウンセラーを身近に感じてもらうために、スクールカウンセラー便りを発行することは意義が大きいと言えます。
ところで、本田(2015)では、援助要請研究の立場から、実際に相談に至るまでのプロセス(援助要請経路)を整理しています。そして、相談しない・相談できない人の心理を、【困っていない】、【助けて欲しいと思わない】、【「助けて」と言えない】の3種類に整理しています。
子ども自身は【困っていない】と感じていても、周囲から見ると支援が必要な子どももいます。スクールカウンセラー便りでストレスチェックリストを紹介すると、【困っていない】子どもたちも、相談の必要性を感じるかもしれません。
また、【助けて欲しいと思わない】子どもたちは、困っているにもかかわらず相談の必要性を感じていない状態です。スクールカウンセラー便りを通して、カウンセリングやその効果について知識を得ることが出来れば、相談につながるかもしれません。
【「助けて」と言えない】子どもたちは、困っていて相談したいと思っているにもかかわらず、相談することができていない状態です。スクールカウンセラー便りを通して、相談への抵抗感を低め、期待感を高めたり、相談の方法を伝えたりすることができれば、相談につながるかもしれません。
こういったことから、スクールカウンセラーの活動予定を伝えたり、カウンセリングの利用方法を伝えたりすることは、子どもたちのカウンセリング利用を促すために非常に大切だと思います。また、カウンセラーには守秘義務があることを伝えたり、カウンセリングでどのようなことを行うのかを伝えたりすることは、相談への抵抗感を低くする可能性があります。カウンセリングの内容や効果について一般的なことをごく簡単に紹介することは、相談への期待感を高める可能性があります。
以上のように、スクールカウンセラー便りの発行を通して、子どもたちのカウンセリングの利用につながることが期待できると思います。
心理学的な知識を伝えて子どもたちの成長につなげる
文部科学省の「スクールカウンセラー等活用事業実施要領」には、スクールカウンセラー事業の内容の一つに、「児童生徒の困難・ストレスへの対処方法等に資する教育プログラムを実施」と書かれています。実際、スクールカウンセラーが教室などに出向き、学級や学年、学校全体の子どもたちを対象にして、ストレスマネジメントや対人関係スキルの学ぶ機会を提供する実践活動も広く行われています。こういった活動は心理教育プログラムと呼ばれていて、必要性が指摘されています。
また、公認心理師法では、第2条第4項に「心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。」と書かれています。心理職であるスクールカウンセラーは、カウンセリングルームの中で相談活動をするだけではなく、情報提供も積極的に行うことが大切だと考えられます。
しかし、スクールカウンセラーが学校で勤務する時間は非常に限られています。そのため、心理教育プログラムを実践する時間を十分に確保することが難しい現状があると思います。そこで、少しでもそれを補うために、スクールカウンセラー便りを通して、心の健康につながる心理学的な知識を伝えることは大変意味があると考えられます。
まとめ
スクールカウンセラー便りを発行することは、スクールカウンセラーについて知ってもらう、カウンセリングの利用へつなげる、心理学的な知識を伝えて子どもたちの成長につなげるという3つの意義があります。
スクールカウンセラーは、学校での勤務時間が限られていますが、スクールカウンセラー便りも積極的に発行することが大切だと思います。
文献
水野治久 2014 子どもと教師のための「チーム援助」の進め方 金子書房
本田真大 2015 援助要請のカウンセリングー「助けて」と言えない子どもと親への援助 金子書房